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少年は、洞窟へと一歩踏み入れる。洞窟の中は不気味なほどに静まり返っていて、時折どこかから水音が聞こえてくるだけである。当然、光源もなにもなく少年は持ってきていたランプに明かりを灯す。
「うわっ、ランプつけても暗いな」
ランプの光が洞窟の中でぼうっと透けて見える。洞窟の中は思ったよりも広く、奥へと一本路が続いている。少年はその路を歩きながら、これから自身が会いに行く魔獣へと思いを馳せる。
﹢ ﹢ ﹢ ﹢ ﹢ ﹢ ﹢ ﹢ ﹢ ﹢
グルルルル...
少年が洞窟の奥へ奥へと進んでいくと、何かが少年の耳に聞こえる。
(この音はまさか......俺のお腹の音!?)
「...って、なわけないよな。はははっ」
グルルルル...
もう一度少年の耳に何かが聞こえる。今度は先程よりも少しだけ鮮明に聞こえる。それは、洞窟の奥から。
(これが、魔獣の声か...。噂通り、厄介な相手じゃないといいんだけど)
そんなことを考えながら、少年は洞窟の奥へとまた一歩踏み入れる。すると、少年の手元で頼りなくも心強い光を放っていたランプの明かりがフッと消える。
「明かりが...」
少年は、どうにか明かりをつけようとするが、暗闇に慣れていない目には未だ何も映らない。
(明かりをつけるのは難しそうだな...。仕方ない、このまま奥まで進んでみるか)
此処で帰ったとしたら、また戻ってこなければならない。直に目も慣れてくるだろう、と少年は歩みを進める。目が慣れる前に魔獣がタイミング良く現れない限り、特に危険のない洞窟のようだし、と心の中で付け加える。ただ危険が余りなさそうだが、ないと断定できるわけでもないので十分に気を付けつつ進んでいく。
「うわっ!!」
だが運悪く少年が踏み出した場所が階段のような形状になっていたらしく、彼の思いも虚しくゴロゴロと転がっていく。その勢いは段々と上がっていき、それが十秒程続いた後少年は地面に放り出される。
「いってぇー...」
いきなりの出来事であったため、少年は受け身を取ることもできず頭を地面にぶつけてしまう。幸い、外傷はなさそうである。だが念の為、後で病院に行っておこう、と少年は思う。他にも怪我がないか一通り確認した後、少年は立ち上がって辺りを見渡す。まだ、あまり目は慣れていないが先程よりは幾分かましになったようだ。
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