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草薙は息を呑んで両手で口をふさぐ。
まだほんの先しかおさまっていないところで、止める。こうして見ると、ただの固い肉の棒。
「だ…大丈夫。ちょっとびっくりしただけだから…」
ほんとにいいの?
だがもう聞かない。だめだと言われたとしても、もう止められないから。
「…入れる」
挿し込むなんてなまやさしいもんじゃなく、体の重みごと沈めていく。深く。
空調がよく効いているのは肌の表面でよくわかるのに、内側がじりじりする。
「…あつい」
は、と息を吐く。
頭の中をぐちゃぐちゃにかき回されている感覚。
しているのは俺の方なのに。
草薙の左脚の膝の関節を、持ち上げて胸の方に倒す。もっと深くまで、ぴったりと隙間なく俺で埋めたいという、おそらくは衝動。
「待って、」
強引だったかもしれない。
「…もう待てない」
考えてしたことじゃなかった。
ひと息に腰を引いて、それから、呼吸するまも与えず一気に貫く。
「や…っ」
乱暴者だとこの男に言われたことがあった。乱暴? そうかもしれない。
こんなに嫌がっているのに。何度も。
「やだ…っ、だめ…だって、ば!」
たがが外れかけた声を出す。それを無理やりに、噛み殺そうとしている。
言葉にならない、泣いているような、俺の下卑た欲望をかき立てる声。
「先生…ここ、いい?」
奥の、上側。たぶん、指では届きそうで届かないところ。
わざと触れるように動くと、こらえきれないように声をこぼした。体温が上がって、反応して勃っている。細い体の真ん中。
「…いいんだ?」
するりとてのひらでそれを包む。体ほどには、熱くない。
「…生徒に…こんなの見せられない…っ」
顔を横にそむけ、くしゃくしゃになったシーツをつかんで声を抑えようと、口元に押し当てている。
まぶたを固く閉じている。白い、白過ぎる肌はしっとりと汗ばみながら浅い息遣いで上下している。だくだくと汗をかく性質ではないらしい。舌を這わせればわずかに塩辛い。
こんなの、煽るだけだ。
華奢な手首をつかむと、つられて顔もこちらを向く。
青い血管が透けて見える手首の内側に、衝動的に歯を立てそうになる。
代わりに、唇で強く吸う。体がびくりと縮こまる。黒い瞳が揺らぐ。
そんな目で俺を見ないで。
熱を逃すように吐息をもらして、それが手首の薄い皮膚にかかると、草薙は目を細めた。ゆっくりと。まぶしそうに。
「…今日は、全部見せて」
今日だけは。
ぐちょぐちょで、熱い。どこもかしこも。
こんなこと絶対に学校では教えてくれない。
これは最後のキスだ。
解放、してあげないと。教師としての義務から、先生を。
もうこれ以上望んではいけないのだ。
思いとは裏腹に、声が出せないくらい、息ができないくらい奪う。
翳り始めた室内には、息遣いと、粘膜の擦れ合う音、ベッドの軋む音。草薙と俺の周囲だけほのかに上昇する温度。汗がぱたりとシーツに落ちる。
背中にしがみつきながら、か細い声が俺の耳元に訴える。
「も…、だめっ…」
どくん、と心臓じゃないどこかが脈を打って、出るとかイクとか口に出す余裕なんかなかった。
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