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夏の終わり。
涼しげな風は微かに秋の匂いを含んでいて、そのどこか懐かしさを感じさせる匂いに、少年アンディは鼻をひくつかせた。
夏から秋に変わるこの時季の空気は好きだ。
アンディは裏庭の端に植えられた木の根元に座り、澄み切った空に浮かぶ雲をぼんやりと眺める。
孤児院の裏庭はとても静かだ。広い丘の上だから空気も良いし、ここに居ると気分が落ち着く。
暇つぶしに持ってきた本を胸に抱いて、息を吐いた。古びた本は、撫でるとざらついた感触を指に伝えてくる。
秋の匂いと心地よい空気に混ざって、どこからか鳥の鳴き声が届く。
ざぁっ……と、風が吹いた。
アンディの癖のない茶色の髪が、風の流れに乗って揺れる。
今日は風が強い。本を持ってきたけれど、これじゃあ風に頁をめくられて、落ち着いて読めないかもしれない。
まぁ、これ以外に暇を潰せるようなものもないから、仕方ないけど……。
アンディは木の幹に背を預けると、胸に抱いた本を開く。
直後に強く吹いた風が勝手にぱらぱらと頁をめくり、アンディはちょっと不機嫌そうに、眉をしかめた。
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