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アンディが初めて自分の秘密を知ったのは、今から二年ほど前。まだ十二才の時のことだった。 季節は夏から秋に変わり、暖炉の火が恋しくなってきた頃。 あの日アンディは、いつも通り朝から孤児院の掃除をしていた。 掃除は孤児院に暮らす子供たちにとっての日課だ。週毎に持ち場が変わる決まりで、それぞれ割り当てられた場所を、毎朝掃除することになっている。 今週のアンディの持ち場は食堂。 孤児院には四十人近い子供たちが暮らしている為、食堂はとても広く作られていた。 なので、食堂の掃除はアンディの他に、七人の子供たちが担当している。 皆、それぞれ床を掃いたり、テーブルや椅子を拭いたりしていた。 「おい、アンディ。」 箒で床の埃を集めていたアンディは、背後から自分の名前を呼ばれ、ぴくりと眉を動かした。 声をかけてきたのは、アンディと同い年の少年、セスだ。 セスは背が高くて、顔立ちは悪くないものの、少し目つきが悪い。いつも自信満々な態度で、偉そうに周りを睨みつけている。 その後ろにはもうひとり、コナーという少年がいた。彼もアンディと同じ年の少年だ。猫背のおどおどした奴で、いつもセスの後ろにくっついている。 アンディは、ふたりのことがそんなに好きじゃなかった。 セスはちょっと背が高くて体格がいいからって、年下の子たちに対して高慢で意地悪だし、そんな彼に逆らわず従者のように言いなりになっているコナーにも、ずっと苛立ちを感じていた。 「アンディ!」 二度名前を呼ばれて、アンディはようやくセスの方を向く。 一度目は無視したからか、セスは若干苛立っているようだった。偉そうに腰に手を当てて、悪い目つきを、更に不機嫌そうに吊り上げている。
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