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「……うるさい。おれは、間違ったことは言ってない。」
アンディは不愉快そうに表情を歪めた。
確かに、アンディは年の割に背が低い。けれど、別に背が低いこと自体は気にしていない。ただ、セスにからかわれるのが不快だったのだ。
セスはいつも、相手を見下している。わざと相手をからかい感情を逆撫でし、反応を見て楽しんでいる。
そういうところも、気に入らない。アンディはセスが大嫌いだった。
「ふん、いっつも本なんか読んで部屋の隅に引きこもってるから、そんなチビでひょろっちいんだよ。」
「別に、関係ないだろ。」
「そうか? ああ! そういやよく考えたら、そんな背が低いんじゃ、窓の上の方に手が届かないよな。気づかなくて、悪かったよ。」
セスが、にやりと笑うのが分かった。
ぎり、と箒を持つ手に力がこもる。アンディはその場を動けなかった。
相手にしなければいいと分かっているのに、セスのからかいの言葉に、頭の中にじわじわと怒りが広がっていく。
「こりゃ、はしごが必要だな。お前の短い脚じゃ、背伸びしたって届かないだろうから────」
「ッうるさい!」
アンディは箒を持ったまま、両手をセスに向かって突き出した。
抑えられなくなった怒りを爆発させ、感情に任せてセスを突き飛ばす。
「うわっ!」
アンディの力が、思いのほか強かったのか。
セスはよろけた体を支えきれず、体勢を崩して床に思い切りしりもちをついた。側のテーブルにぶつかって、大きな音が響く。
ふたりのやり取りに見ないふりを決め込んでいた周りの子達が、さすがに何事かと視線を向けた。
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