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もともと祖母は、たった一人の孫である僕にはとても優しい人だったから、あのときの恐ろしい表情は大人になった今でも心に焼き付いている。
祖母の言葉の真意は、よくわからなかった。それでも僕はしばらくの間は、祖母の言いつけをしっかりと守っていた。
一体、この蔵の中に何が隠されているのだろう……?
ときどき、そんな疑問が頭をかすめたけれど、あのときの祖母の厳しい表情と言い方を思い浮かべると、蔵に足を踏み入れることは子供心にもタブーに思われた。
ある日の放課後、僕は庭でボール遊びをしていた。内気だった僕には友達があまりおらず、こうして一人で遊んでいることも多かったのだ。
ゴム製のボールを塀に向かって投げ、跳ね返ってきたボールを拾い、また投げる。単調な作業のようだけれど、遊び相手がいない以上、そうして一人でボールを追いかけているしかない。
そのうち、ボールが蔵の入り口の扉の前あたりまで転がってしまった。
僕はボールを拾うついでに、何気なく扉のあたりをつぶさに調べてみた。
扉には閂がかかっている。
閉ざされた扉……という事実が、子供の好奇心をスパイスのように強く刺激していた。
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