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ふと蔵の中が気になって仕方なくなった僕は、閂に手を当ててみた。
木製の閂は、強い陽ざしや風雨を長く浴びていたせいか、ボロボロに腐っている。
そっと手に力をこめる。そして、全体重をかけて閂を上から押してみた。
閂はバキッと小気味よい音を立てて、真っ二つに折れてしまった。
蔵の中に入ることには、たしかに罪悪感がある。
おばあちゃんの言いつけを守らなくていいの……? 心の中でそんな声がしたけれど、動き出した好奇心に、もうストップはかけられそうもない。
折れた閂を丁寧に外し、扉に手をかけて、そっと押す。
あまりにもあっけなく扉は開いた。
中はほとんど真っ暗だったが、かすかに明り取り用の窓から光が差し込んでいる。
これは明かりが必要だな……。
僕の部屋の勉強机の横に、懐中電灯が吊るしてあることを思い出した。防災用に父が用意してくれたものだ。
自分の部屋までひとっ走りし、懐中電灯を持ってきて、ついに禁断の蔵の中へ足を踏み入れた。
長い間、掃除されていなかったのだろう、カビの臭いが鼻をつく。
極度の緊張で心臓がドキドキして、口から飛び出そうな気がしている。
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