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懐中電灯のスイッチを入れ、中を照らしてみた。
いつから置かれたものかわからない埃だらけの段ボール箱や木箱が山積みにされていた。
堆く積まれた箱と箱の間には、やっと僕一人が通り抜けられるくらいの隙間があったので、奥まで一気に進んでみることにする。
一番奥まで進むと、窓の下に誇りまみれになった小さなガラスケースが一つあり、その中に一体の日本人形が鎮座していた。
幼い少女をかたどった人形で、こちらに微笑を見せている。
絵の具で塗ったように真っ白な顔に、紺色の着物姿……。
薄暗い中で見ると、可愛いというよりもちょっと不気味だった。
それでも不思議な魅力がある。戦前の日本には、こんな着物を着た少女がたくさんいたのだろう。
ガラスケースの中の人形は、どれほどの時間をこの蔵の中で過ごしてきたのか。
最初は少し怖かったけれど、見ているうちに人形に親しみを覚えてくる。
いつの間にか、僕は目の前の人形に見入っていた。
時間が立つのも忘れ、その真っ白な顔とクリッとした瞳、薄い唇、小さな形の良い鼻を食い入るように眺めていた。
「キレイだなあ……」
思わず嘆息してしまう。
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