4人が本棚に入れています
本棚に追加
教室に戻ったあたしは、ロッカーの中の自分のランドセルを取り出して机まで持っていく。
その途中、一つだけランドセルの乗った机を見つけた。
ブルーのランドセル。縁は白いステッチで脇にはドラゴンと盾のエンブレムの模様が付いている。優吾くんのだ。
外から聞こえる声に、窓からその姿を探す。
「またなー!」
「じゃあなー」
散り散りに帰っていくその後ろ姿には、みんなランドセルを背負う。しかし、優吾くんの背中にはそれがない。
また、忘れてる……
あたしは自分の机から筆記用具と自由帳を取り出した。
『友達になってくれて、ありがとう』と書くと、綺麗にその紙を折りたたんだ。
優吾くんのランドセルの中にそっと入れると、職員室に向かった。
「先生、これ。忘れものです」
「…………また?」
「あはは、また、です」
優吾くんのランドセルは、あたしと優吾くんを友達にしてくれた、大切な忘れもの。
大丈夫、また次忘れてしまっても、あたしは呆れないで先生に届けるから。ね。
ーendー
最初のコメントを投稿しよう!