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王がマヌ語で命じると、待ち構えていた数人の兵士たちが、一斉にララに飛びかかった。
褐色の腕がララを捕らえ、石を探しまわった。石はまだペンダントにしたまま首からかけていたが、紐を長めにして服の下に隠し、見えないようにしてあった。
一人の兵士が服の前合わせを乱暴に開いて、ペンダントを奪おうとした。
そのとき、兵士の目の前に青白い火花が散り、他の兵士たちもみな痺れたようにのけぞった。
磔になっていたカラスが扉から剥がれて突進してくる。一瞬カラスの茶色い瞳が、金色に光って見えた気がした。
解けるはずのない拘束を解かれて、まわりの高官たちがどよめく。
カラスは不意打ちを食らった兵士たちを押しのけ、ララの手首を掴んで逃げようとした。踵を返して再び扉の方へ走りだす。
だが、二三歩踏みだしただけで、カラスは背後から猛烈な勢いで突かれたように転んでしまった。細長い絨毯の上を五、六歩分くらい前のめりで滑り、もろに顔面をすりつけてしまった。
また王の魔法だ。第三の目が光っている。
手首を掴まれていたのでララも一緒に引きずられたが、すぐに起きあがれたので、抱え起こそうとした。
その間に兵士たちも駆けつけてくる。
ララが床に膝をついた姿勢で、腕を引っ張ろうとすると、カラスは逆に自分の方に引きよせ、ペンダントを引きちぎった。
尻餅を着いたララの口の中に、小さな魔石が押しこまれた。
それとほぼ同時に兵士たちがまわりを取りかこみ、四方から一斉に刀の切っ先が突きつけられた。さっきペンダントを奪おうとした兵士も、起きあがって刀を抜いている。
ララはへたったまま、上から覆いかぶさるように抱きしめられていた。
口の中には飴玉のような感触の魔石。少し目線をあげると、ぎらついた白刃。それを見つめるカラスの顔は汗ばみ、これまでにないくらい緊張で強ばっている。胸板についた後頭部からも、荒い息と鼓動が伝わってくる。
それでも、カラスは抱きしめる腕をゆるめなかった。
ララは赤い石を飲みこんだ。
恐怖で締めつけられたのどの奥に、なんとか異物を通す。あたりが静まり返っていたので、飲みこむ音がいやによく聞こえた。
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