4章 理不尽な罪状

11/15
前へ
/130ページ
次へ
すると、ララたちが部屋に入るまで口論していた老人が、すかさず異議を唱える。 「近衛隊長といえど、陛下直々のご命令に『待て』とは無礼な。陛下の裁きが不誠実だと申すのか。陛下、この者は自分が混血だからチタニア人に同情しているまでの事。隊長の言う事に耳を傾ける必要はございません」 アシュラムは近衛隊長だったのだ。 肌の色も瞳の色もほかのマヌ人と違っていたので、混血と聞いて、なるほどと思った。 「血とは関係ありません」 アシュラムはエメラルドグリーンの瞳で、黒い瞳をした老人をにらんだ。 「意見があるなら言え。血の話は慎め」 王は二人の側近にむかって言った。 老人は不満げに口をつぐんだ。 「ティミトラのような功臣の娘をむやみに殺せば、兵士たちの志気がさがります。娘からは薬かまじないを使って石を取り出し、誘拐されたクレハ様の安否が確認できるまで身柄を拘束して、そのあとで裁判にかけ、処分を決定するのが妥当かと。男のほうも同様です。そうすれば、誰も陛下のことを不義とは思わないでしょう」 『誘拐された』という言葉がララの耳に引っかかった。 あの盗賊のような男たちが、王のいとこを誘拐したというんだろうか? だとしたら、クレハは男たちに強要されて襲ってきたんだろうか? それにしても様子が変だったけど……。
/130ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加