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〈なんだこれ?〉
汚らわしい指が、聖なる生き物の角のかけらをつまみあげる。看守は宝石かなにかだと思ったようだ。
〈これは全部入居料としてもらっとくぜ〉
そう言って金を懐に入れ、あろうことかユニコーンの角を首にかけた!
「返せ」カラスはトゥミス語で言った。
言葉は通じなくても、なにをどうしろと言っているのかは、察したようである。が、
〈んんー? トゥミス語じゃ、なんて言ってんだかわかんねえなあ? 俺にプレゼントしてくれるってえ?〉
看守は角のかけらをカラスの目の前でぶらぶらさせた。
〈返せって言ってんだよ。オカマ野郎〉
我慢ならずにマヌ語で言い返すと、オカマ野郎に棍棒で何発も殴られた。
〈しゃべれんじゃねえかよ。この野郎!〉
痛みとともに、怒りがこみあげてくる。
なんで俺ばかりこんな目にあわなければならないのか?
俺が一体なにしたっていうんだ?
野盗に襲われたときは、身を守るために必要だったから、やり返しただけだ。謁見の間から逃げようとしたときだって、コソ泥みたいなクソ国王に言いがかりをつけられて、いつ処刑されてもおかしくない状況だった。伯父に殺されそうになったときだってそうだ。
やりかえさなければやられてた。どいつもこいつも、やられて当然の奴らだ。呪いをかけられた奴らも。
なのにどうして俺ばかり責められる? 世の中には汚いことをして、のうのうと生きてるクズもいる。
真面目に実直に生きていて、ただ運がいいってだけのバカの下で、一生小作人やら使用人やらで搾取されるなんて馬鹿らしい
──そう考えるのは、間違いなのか?
ただ単に運が悪いということなんだろうか? それとも、俺が……
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