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看守は気の済むまでカラスを殴ると、ズボンだけ履かせて手枷を外し、塔の階段をのぼらせた。
最上階の六階まで登った。
二階から監房になっているので、そこから第五級で、六階が第一級という割り振りなのだろう。
なんの等級かわからないが、犯罪の種類で振り分けているのでなければ、たぶん結界の強度を示しているのかもしれない。だとしたらこれから連れて行かれるのは、最も厳重な一等室ということになる。
六階には房が二つしかない。満室だと言っていたが、俺を入れるために今入っている誰かを処分するのか?
看守は鉄格子の前で立ち止まった。
中には椅子もベッドもなく、マヌ人の中年男が石床の上に直接あぐらをかいていた。髪もヒゲものび放題で、こちらも上半身裸で、やせ細った腕と洗濯板のようなあばらをさらしている。
ここに来てかなり長そうだ。自分がこれからどうなるか想像もつかず、突然連れてこられた新参者を見て驚いている。げっそりして眼孔は落ちくぼんでいるのに、目だけは妙に爛々としていた。
自分の運命を知らない哀れな囚人の姿を、カラスは目に焼きつけた。
こんな房に長く入れられたら、自分もそのうち、この男のような姿になってしまうかもしれない。
むこうはむこうで、状況を知ろうと必死にカラスからなにか探ろうとしている。
看守が鍵を開けているあいだ、二人でしばらくじっと見つめあってしまった。
だが戸が開くと、看守は中の男を出さずに、そのままカラスを押しこみ、外から鍵をかけ直して、格子越しに手錠を外した。
〈今日から二人の愛の巣だ。かわいがってもらえ〉
これなら死刑執行日を無視しなくて済むし、近衛兵の命令にも逆らったことにならない。一応看守なりに頭を使ったらしい。
新入りと相部屋だとわかると、囚人は身を乗りだして看守にたずねた。
〈こいつはなにやったんだ? 刑は?〉
〈反逆罪だ。刑は決まってない〉
すると途端に、囚人の表情が生き生きと輝きだした。
看守が鍵束を懐にいれて階段を下りていってしまうと、囚人はカラスにむかって両手を広げ、親しげに言った。
〈よく来たな、同志! ともに革命について語りあおう〉
どうしたもんかな……。
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