5章 反逆者

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看守は気の済むまでカラスを殴ると、ズボンだけ履かせて手枷を外し、塔の階段をのぼらせた。 最上階の六階まで登った。 二階から監房になっているので、そこから第五級で、六階が第一級という割り振りなのだろう。 なんの等級かわからないが、犯罪の種類で振り分けているのでなければ、たぶん結界の強度を示しているのかもしれない。だとしたらこれから連れて行かれるのは、最も厳重な一等室ということになる。 六階には房が二つしかない。満室だと言っていたが、俺を入れるために今入っている誰かを処分するのか? 看守は鉄格子の前で立ち止まった。 中には椅子もベッドもなく、マヌ人の中年男が石床の上に直接あぐらをかいていた。髪もヒゲものび放題で、こちらも上半身裸で、やせ細った腕と洗濯板のようなあばらをさらしている。 ここに来てかなり長そうだ。自分がこれからどうなるか想像もつかず、突然連れてこられた新参者を見て驚いている。げっそりして眼孔は落ちくぼんでいるのに、目だけは妙に爛々としていた。 自分の運命を知らない哀れな囚人の姿を、カラスは目に焼きつけた。 こんな房に長く入れられたら、自分もそのうち、この男のような姿になってしまうかもしれない。 むこうはむこうで、状況を知ろうと必死にカラスからなにか探ろうとしている。 看守が鍵を開けているあいだ、二人でしばらくじっと見つめあってしまった。 だが戸が開くと、看守は中の男を出さずに、そのままカラスを押しこみ、外から鍵をかけ直して、格子越しに手錠を外した。 〈今日から二人の愛の巣だ。かわいがってもらえ〉 これなら死刑執行日を無視しなくて済むし、近衛兵の命令にも逆らったことにならない。一応看守なりに頭を使ったらしい。 新入りと相部屋だとわかると、囚人は身を乗りだして看守にたずねた。 〈こいつはなにやったんだ? 刑は?〉 〈反逆罪だ。刑は決まってない〉 すると途端に、囚人の表情が生き生きと輝きだした。 看守が鍵束を懐にいれて階段を下りていってしまうと、囚人はカラスにむかって両手を広げ、親しげに言った。 〈よく来たな、同志! ともに革命について語りあおう〉 どうしたもんかな……。
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