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自称革命家は相手が興味を示したと知って、意気揚々と説明した。
〈そうだ、高官以外は王にいとこがいることすら知らないがね。前王が亡くなられたとき、現王のリュージュは正当な王位継承者であるクレハ様に毒を盛り、王座を奪い取った。クレハ様は一命を取りとめたが、廃人になってしまわれて、どこかに監禁されている。
リュージュはこの百年間で、最も非情な独裁者だ。官吏でも命令に従わない者は容赦なく殺す。しかも王自身は、トゥミス皇帝の下僕だ。今、ヴァータナが浮浪者であふれ返っているのは、神意に背いた王が国を治めているからなのだ。我々はクレハ様を探しだし、現在の傀儡政権を倒し、この国に真の王を立てる!〉
今のマヌ王がトゥミスの傀儡だなんて話は初耳だ。
あの気色悪い額の目ん玉は、どうせ作り物だろうと思っていたが。
でもそんなことよりも、クレハの話のほうが気になった。
〈探しだす? もう誰かに『誘拐された』って聞いたけど〉
単純に考えたら、ジャングルで襲ってきた男たちが誘拐犯なのだろう。
ドゥーモは歓声をあげた。
〈同志たちが見つけだしたんだ! やった!〉
〈ちょっと待てよ。さっきクレハは廃人だって言わなかったか? おまえら、廃人を王にするのか?〉
〈邪悪な王を倒せば、神の御力で正気に戻られる。たとえ我が身が牢獄で朽ちようと、思い残すことはない! 同志よ、我々には輝かしい来世が待っている。ともに祝おう〉
ドゥーモは〈革命万歳! 革命万歳!〉と叫びはじめた。
カラスは耳をふさいで、心の中でつぶやいた。
──おまえらのありがたい革命のおかげで、俺もララも死にそうだ。そんなに来世がいいところなら、この世で革命なんかしてないで、さっさとあの世に行っちまえばいい。死ね……自殺しろ……。
しばらくして、看守が階段を駆けあがってきた。
〈うるせえ! 誰だ騒いでんのは?〉
革命家はまだ絶叫しつづけている。こっちまで気が変になりそうだ。
〈チタニー、そいつを黙らせろ〉
〈自分でやれよ〉
〈やったら、別々の房にしてやる〉
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