5章 反逆者

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自称革命家は相手が興味を示したと知って、意気揚々と説明した。 〈そうだ、高官以外は王にいとこがいることすら知らないがね。前王が亡くなられたとき、現王のリュージュは正当な王位継承者であるクレハ様に毒を盛り、王座を奪い取った。クレハ様は一命を取りとめたが、廃人になってしまわれて、どこかに監禁されている。 リュージュはこの百年間で、最も非情な独裁者だ。官吏でも命令に従わない者は容赦なく殺す。しかも王自身は、トゥミス皇帝の下僕だ。今、ヴァータナが浮浪者であふれ返っているのは、神意に背いた王が国を治めているからなのだ。我々はクレハ様を探しだし、現在の傀儡(かいらい)政権を倒し、この国に真の王を立てる!〉 今のマヌ王がトゥミスの傀儡(かいらい)だなんて話は初耳だ。 あの気色悪い(ひたい)の目ん玉は、どうせ作り物だろうと思っていたが。 でもそんなことよりも、クレハの話のほうが気になった。 〈探しだす? もう誰かに『誘拐された』って聞いたけど〉 単純に考えたら、ジャングルで襲ってきた男たちが誘拐犯なのだろう。 ドゥーモは歓声をあげた。 〈同志たちが見つけだしたんだ! やった!〉 〈ちょっと待てよ。さっきクレハは廃人だって言わなかったか? おまえら、廃人を王にするのか?〉 〈邪悪な王を倒せば、神の御力で正気に戻られる。たとえ我が身が牢獄で()ちようと、思い残すことはない! 同志よ、我々には輝かしい来世が待っている。ともに祝おう〉 ドゥーモは〈革命万歳(ばんざい)! 革命万歳!〉と叫びはじめた。 カラスは耳をふさいで、心の中でつぶやいた。 ──おまえらのありがたい革命のおかげで、俺もララも死にそうだ。そんなに来世がいいところなら、この世で革命なんかしてないで、さっさとあの世に行っちまえばいい。死ね……自殺しろ……。 しばらくして、看守が階段を駆けあがってきた。 〈うるせえ! 誰だ騒いでんのは?〉 革命家はまだ絶叫しつづけている。こっちまで気が変になりそうだ。 〈チタニー、そいつを黙らせろ〉 〈自分でやれよ〉 〈やったら、別々の房にしてやる〉
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