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カラスはティミトラの顔をしたサミーを押し倒し、甘い菓子の包み紙をむくようにその体を味わった。
すごく気持ちよかった。彼女も喜んでる。
けれど抱きあってる途中で、彼女の顔がさっと青ざめた。
「主人が帰ってきた!」
振り返ると、そこの屋敷の主人のニイラスではなく、伯父が立っていた。
素っ裸で、手にはまっ赤に焼けた火掻き棒を持っている。伯父はその火掻き棒を、背中に押しつけてきた。皮膚が焼ける! 悲鳴をあげて床に転がり落ちた。
伯父は興奮した表情でこちらを見おろして、まだ棒を押しつけようとしている。
そのとき、黒い影が突然伯父に襲いかかった。
それは金色の目をした大きな狼だった。
どう猛なうなり声をあげながら牙を突き立て、あっという間に伯父をたいらげてしまった。血も骨も髪の毛一本すら残らなかった。
「助けてくれてありがとう」
カラスは床にうずくまったまま、狼に礼を言った。
「いいってことよ」
黒い狼は舌をだらんとたらして笑った。本当に笑ったのかどうかわからない。犬の仲間は口を開けてハアハアしていると、いつでも笑っているように見える。
ベッドの上にはいあがろうとすると、サミーがいなくなているのに気づいた。乱れたシーツだけが残っている。
「サミーは?」
カラスが聞くと狼は言った。
「ベッドの上にいたのはララだよ」
「そうだっけ?」
そう言われてみれば、そんな気がしてきた。ここには、ララを迎えにきたんじゃなかったっけ? 思い出したぞ。
「ララはどこ行ったんだ?」
狼の舌から大量のヨダレが、だらだらとしたたり落ちた。
「喰っちまったよ」
「え?」
「返してやろうか?」
二三度引きつけを起こすと、狼の体が少し膨らんで、胃の中のものを勢いよく吐き出した。
血まみれの赤毛、小さな白い手首、ターコイズブルーの眼球がゴロゴロと床を転がった。
あまりの衝撃に、声も出なかった。
ララの破片を浴びて、部屋も俺もまっ赤だ!
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