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4章 理不尽な罪状
謁見の間に行くにあたって、客は必ず、廊下のようにつらなった小部屋をいくつも通り過ぎなければならない。
それぞれの部屋には、神話を題材にした絵や彫刻などの美術品が飾ってある。等身大の翡翠の像、黄金のレリーフ、細密画の描かれた大きな白磁の壷。どれもほかでは目にすることのできない手の込んだ逸品ばかりだ。
それらはまるで、謁見の間を訪れる客に、これから会う王の権力を誇示するために置かれているようだった。
ララはマヌの民族衣装を着せられて、謁見の間の扉の前に立っていた。
待たされているあいだ、絢爛豪華な大扉のむこうから、マヌ語で言い争う声が聞こえた。大勢いるようだ。各々がいっせいに好き勝手な主張をしているので、一人一人の声が聞きとれない。
あとからカラスが入ってきたので、ララは思わず目をそらしてしまった。
まだ怒ってるかな……。
カラスも民族衣装に着がえさせられている。が、着丈があっていなくて、ズボンも袖もつんつるてんだ。
マヌ人は全般的に、チタニア人よりも小柄なようだ。
カラスはララの隣に並び、なまりのきついトゥミス語を使って、そばにいる官吏に聞こえないように囁いた。
「魔法の石のこと、聞かれたか?」
ララは首を横に振った。
「盗まれたって言ってあるから、余計なことしゃべるなよ」
それっきり、おたがいに目もあわさず、口もきかなかった。
どちらも腹立たしく思っていることを蒸し返しはしないが、かといって謝りもしない。気まずい沈黙が、壁のように立ち塞がった。
しばらくして、扉が開いた。
ララは中を見て、目を丸くした。
さっき中庭で別れたばかりのアシュラムが、玉座に座した王の隣で、なにかしゃべっていたからだ。
その反対側にも一人立っていて、やはりまくしたてるようになにかしゃべっている。こちらは老人で文官の格好をしていた。
両側の壁にそって、位の高そうな官吏が数人並んでいる。
警護にあたる近衛兵が、入り口と王の身辺に立って目を光らせている。
全員による討論は終わったのに、王の両脇にいる二人だけが、しつこくしゃべりつづけているようだった。
アシュラムは側近中の側近だったのだ。
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