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ララたちは床に膝をついて、三回平伏した。それがマヌ王と謁見するときの正式な作法なんだそうだ。
カラスは『ペテン師、ペテン師』と馬鹿にしていた割に、緊張してかしこまっている。寸分たりとも馬鹿にした態度は見せない。
王に話しかけられ、カラスがマヌ語で答えはじめた。
ララにはなにを話しているのかまったくわからなかったが、話し方がいつもよりぎこちないのは感じた。場違いな所に引っぱり出されて、完全に畏縮してしまっている。
重く張りつめた空気の中、異邦人が一人、四苦八苦しながら下手なマヌ語で話しつづける。
ララは横でハラハラしながら、それを見守るしかなかった。
そのうちまわりに立っている官吏たちが、卑しい者を見るような目でカラスのことを見ているのに気づいた。
でも本人は、話すのに必死でまわりを振り返る余裕もない。
アシュラムのほうを見ても、ここに入ってから一度も目をあわせてくれない。初対面のように、そ知らぬ顔をしている。
ララはだんだん悲しくなってきた。
しばらくして、官吏の一人が下手くそなマヌ語に耐えきれずに吹きだした。
王はそれに気づくと、叱責した。その途端、第三の目がうっすら光り、官吏は石のように硬直してばったり倒れてしまった。
すぐに衛兵がそれを担いで片づけた。
カラスは王の魔力を垣間見て、ますます動揺しているようだった。
あの目は作り物だと頑固に言い張っていたくせに──ララはそう思いながら、自分だけでもしっかりしなければ、と腹をくくった。
「もうよい。おまえたちの国の言葉で話せ」
王はさんざんマヌ語で話させたあと、流暢なトゥミス語で言った。
見た目では歳を判別しにくいが、若い感じの声だ。
言葉がわかるなら、最初からそう言ってくれればいいのに。
苦労してマヌ語を話していたカラスは、顔を引きつらせている。相手が王でなければ、とっくに怒鳴り散らしていただろう。
王はララに視線を移して言った。
「その男は私に真実を伝えず、欺こうとした。本来なら舌を引き抜いてやるところだが、おまえが正直に話せば、抜かないでおいてやろう。赤い魔石をどこへやった?」
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