4章 理不尽な罪状

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ララたちは床に膝をついて、三回平伏(へいふく)した。それがマヌ王と謁見するときの正式な作法なんだそうだ。 カラスは『ペテン師、ペテン師』と馬鹿にしていた割に、緊張してかしこまっている。寸分たりとも馬鹿にした態度は見せない。 王に話しかけられ、カラスがマヌ語で答えはじめた。 ララにはなにを話しているのかまったくわからなかったが、話し方がいつもよりぎこちないのは感じた。場違いな所に引っぱり出されて、完全に畏縮(いしゅく)してしまっている。 重く張りつめた空気の中、異邦人(いほうじん)が一人、四苦八苦しながら下手なマヌ語で話しつづける。 ララは横でハラハラしながら、それを見守るしかなかった。 そのうちまわりに立っている官吏たちが、(いや)しい者を見るような目でカラスのことを見ているのに気づいた。 でも本人は、話すのに必死でまわりを振り返る余裕もない。 アシュラムのほうを見ても、ここに入ってから一度も目をあわせてくれない。初対面のように、そ知らぬ顔をしている。 ララはだんだん悲しくなってきた。 しばらくして、官吏の一人が下手くそなマヌ語に耐えきれずに吹きだした。 王はそれに気づくと、叱責(しっせき)した。その途端、第三の目がうっすら光り、官吏は石のように硬直してばったり倒れてしまった。 すぐに衛兵がそれを担いで片づけた。 カラスは王の魔力を垣間(かいま)見て、ますます動揺しているようだった。 あの目は作り物だと頑固(がんこ)に言い張っていたくせに──ララはそう思いながら、自分だけでもしっかりしなければ、と腹をくくった。 「もうよい。おまえたちの国の言葉で話せ」 王はさんざんマヌ語で話させたあと、流暢(りゅうちょう)なトゥミス語で言った。 見た目では歳を判別しにくいが、若い感じの声だ。 言葉がわかるなら、最初からそう言ってくれればいいのに。 苦労してマヌ語を話していたカラスは、顔を引きつらせている。相手が王でなければ、とっくに怒鳴り散らしていただろう。 王はララに視線を移して言った。 「その男は私に真実を伝えず、(あざむ)こうとした。本来なら舌を引き抜いてやるところだが、おまえが正直に話せば、抜かないでおいてやろう。赤い魔石をどこへやった?」
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