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「あの子のほうが悪いのに……」
ララが思わずそう漏らすと、カラスは血相を変えて手で頭を押しさげ、自分も土下座した。
「ご無礼をお許しください! こいつは森育ちの野人だから口のきき方を知らないもので。石を取り返したと言わないものだから、てっきり盗まれたままかと思っていました」
「ちゃんと言ったじゃない」
「馬鹿黙れ」
二人とも声を低くして言いあう。
ララが頭をあげようとするのを、カラスは腕力で押さえつけていた。
「陛下のいとこ様だったとは存じあげなくて、王の真似をする不逞な輩と思い、このようなことをしてしまったのです。しかし、クレハ様は生きておられるはずです。神の目を持つお方を、非力な人間ごときが、どうやって傷つけられるでしょう? 魔法を使ったとはいえ、アリが象を噛むようなものです。石をご所望でしたら、慎んで献上いたします」
カラスは床に額を擦りつけて嘆願した。
「どうかご慈悲を!」
チタニアなまりの妙な抑揚は抜けきれていないにしろ、その気になればこんなに丁寧な言葉遣いでも話せるのだ。
ララはカラスの手を掴んで引き離し、顔をあげて堂々と叫んだ。
「どうして謝らなきゃいけないの? 悪いことなんてしてないのに! 石はママに渡すように頼まれてあずかっているものです。王様にだって、渡せません」
「子供の言うことです」
カラスはまたララの頭に手をまわし、なおも頭を下げさせようとしている。
ララは強引に床に頭を叩きつけられそうになるのに抵抗して、王の鋭い目を直視していた。
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