僕の災難

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僕の災難

「それでさ、その面接官が薄汚いお地蔵さんみたいな面してやがってさ、口調は丁寧なんだけど、馬鹿にしてんのがまるわかりなんだよ。なんていうんだっけ? 慇懃無礼? そんな奴だったんだよ」  目の前に座る良平が呂律の回らない口調で言った。時刻は20時を少し過ぎたところだ。この居酒屋に入ってすでに2時間が経過している。僕は2杯目のウーロン茶がまだ半分近く残っているのに対し、良平は3杯目のレモンサワーを飲み干して、店員におかわりを要求した。僕はぼんやりとメニュー表を眺めていた。  良平は3カ月前、社用車で事故を起こした。となりには上司が乗っていた。上司は当然叱責したが、良平は何を思ったかその上司を殴った。当然、解雇され、現在無職である。 「もっと殴ってやればよかったよ。本当に。使えねえ。ボケが。あの事故だって、俺の本能的なやつが起こしたんだよ。あそこで事故を起こして、上司をケガさせる予定だったんだよ。でも、情けがでちゃって、怪我しなくて、だから殴ったんだよ。いい気味だ」
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