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良平の罪
流行りの曲のサビだけを何度も口ずさみながら、歩いていた。
内臓ががんじがらめになっているみたいに腹が痛い。まっすぐ歩いているつもりなのに、よろけてしまい、行きかう人間が避けていく。いとても気分が良い。何もかもがどうでもよくて、最高だった。今、この瞬間、頭がはじけ飛んでくれないだろうか。
肩が誰かとぶつかった。よろけて、回転したが、なんとか倒れずにすんだ。
「おう、なんだお前?」
ガラの悪い男2人が凄んできた。おもしろくなってきた。ドラマか漫画みたいだ。
「何だと言われたら、何でしょうか。どうなんでしょう」
「何言ってんだ、お前」
「謝るのは、こっちじゃくて、そっちだろうが。痛いのは俺だ。俺の心と体だ」
「お前、ふざけんなよ」一方の男が胸倉を掴んできた。
「助けて―、助けて―」ひっ迫感のない、小馬鹿にした口調で言った。
「おい、やめとけ」
声がした方を向くと、小柄な老人がいた。
「邪魔するな」
良平は老人の顔面を殴った。拳で鼻が折れたのを感じた。地面に叩きつけられた老人の頭は2度大きくバウンドして、ピクリとも動かなくなった。男達は唖然とした様子で状況を把握出来ていなかった。
「雑魚が」
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