1人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
夜を越えても、苦しくなく、ほろ苦いだけだった。
自動車の制動灯が、宵の足跡の如く遺る。
電球式の信号機は、暗黒の中でなるべき自分を見つけたようだ。
闇に染まると、闇に輝く自分がいることに、気づき、光とは何か考える。
光は必要な存在で、闇が有るからこその価値。
────夢と現実も、そうではないか?
思うに、夢に出てくるのは一人では無いだろう?
誰かの為に夢を見ているのではないか?
誰よりも他人の評価が欲しくて、想像するのだろう?
生きがいを見つける為に、
『君のままでいいんだよ』
と、肯定されるために、笑って存在を見出してもらうのだろう?
現実と、かけ離れた妄想に耽る今に、
恥ずかしいくらいの自分を、
届かない誰かの隣に、出すのだろう?
夢で、今を生きているなら、其処に、ほろ苦い影は立っているか?
現実で、今を生きているなら、彼処に、明るい光は鼓動しているか?
何方にも輝く自分が住んでいるとして、
この蒼い星で過ごしていくためには、
もう喪ってしまった感情を、
何色に染める必要があるか、考えることだ。
「今」、「今」が死んだ。死ぬ。そして、
「今」、「今」が廻る。
いつか必ず、
『今』は、静謐な桜と、散る。
────いや、もう──散ってしまったのだろうか。
路に散り詰められた花道を、道標に、
『夢に住むのは、どこか理想的な自分で、現実に住むのは楽観性を見失ってしまった虚しい人間だ。光に包まれる道に進む時、後ろには濃い影が生まれる。逆に、暗闇に向かっていく自分には確定することの無い、淡くて言葉にできない焦燥が、物語の宵に、只啾々と、はにかんでいるようだ。闇にしんなりと酔う夢幻処の想い出は君を求めてるよ』
最初のコメントを投稿しよう!