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石造りの鳥居
その鳥居が建立されたのは、今から二百二十年前といわれる。当時の地元の豪商が、流行り病を収めるために建てた神社の境内と、外界とを繋ぐ入口。
石造りのその鳥居は、歴史を感じさせる趣きはもちろんだが、石に彫られた彫刻が異質だ。オリエンタルな雰囲気の模様が一面に彫られており、外国に来たのではないかと錯覚する。
そう、あの石段を真っ直ぐ進み、鳥居をくぐれば、そこはイセカイに繋がっている。
わたしは、はやる気持ちを抑えながら、正面から写真を撮った。これが今生の最後の風景になるかも知れないのだ。
友人の理絵に、写真と一緒にメッセージを送る。
わたしは今から旅立ちます
きっとまた会えるから、サヨナラは言わないよ
石段を一段ずつ登り、鳥居が眼前に迫ったところで、もう一度振り返り、故郷の風景を目に焼き付ける。そして、今までわたしを育ててくれた町と人に、改めて感謝する。
名残惜しさを振り切るように、わたしは踵を返した。秋風が舞い散らせた木の葉が、鳥居の向こうへ渦を巻きながら消えていく。わたしはひとつ息を吐くと、目を閉じて鳥居をくぐった。
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