神秘の島

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 当時五歳のわたしは、一月ほどおばあちゃんの家に預けられていた。記憶ははっきりしないが、親の仕事の都合だったはずだ。  丁度桜が満開の時期だったこともあり、テーマパークに遊びに来た感覚で、ワクワクしていたのを憶えている。  わたしは、おばあちゃんに連れられてこの公園にやって来た。ひとしきり滑り台で遊んで疲れたわたしは、滑り台の上に座って休んでいた。その時見た光景が鮮明に蘇ってくる。  赤い夕日を背にして、黒猫が門の前に座っていた。その姿を見て、当時のわたしは不思議に思う。黒猫に影が無かったのだ。  わたしは黒猫から目を離せなくなり、その瞬間だけ時が止まったような感覚に陥る。黒猫はゆっくりと公園の中に入ってきて、隅にある砂場の中を掘り返し始めた。  わたしは黒猫の傍に行き、それからどうしたのか。何故かその先を覚えていない。 「天音、どうした」  理絵の声で我に返る。門の方に目をやると、黒猫がいなくなっている。 「あの猫は?」 「とっくにいなくなっちゃったよ。あんた、急に魂抜けたみたいになってたけど」  わたしは今、いわゆる白昼夢というやつを見ていたのか。それよりも、とにかく砂場を調べなければ。
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