14人が本棚に入れています
本棚に追加
* * *
「おーい、天音?」
気がつくと、理絵がわたしの顔を覗き込んでいた。その距離があまりに近かったので、とりあえずチューしてやった。
「ちょっ、何してんだっ」
慌てる理絵を見るとなんだか落ち着く。どうやら現実世界に戻ってきたようだ。
「わたし、ぼうっとしてた?」
「二、三分くらい魂抜けてたよ。あんた、さっきからおかしくない?」
この公園からおばあちゃんの家に帰ってオムライスを食べるまで、少なくとも一時間はあった。わたしの体感と、実際の経過時間にかなりの差がある。でも、わたしにとっては現実と何も変わらなかった。まだオムライスの味が口の中に残っている気がするし。
右手に握っていたペンダントを見ると、石はもう光っていない。これがわたしに作用した可能性が高いが。
「わん」
足元のサガシモンが一声鳴いた。鼻先で石を退かそうとしている。わたしが手伝ってやると、その下から見覚えのあるペンダントが出てくる。今度は赤い石がはめ込まれていた。
最初のコメントを投稿しよう!