神秘の島

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 理絵を含めた同級生たちと神社裏の墓地で肝試しをした日。  途中で理絵が白い服の女の人の霊を見て、一騒動になった。その時、わたしも霊を目撃していた。理絵の側にいることで、わたしにも霊を観測出来る場合があるらしいことは実証済みだ。問題はそこではなく、なぜこんな強烈な体験をついこの前まで忘れていたのかだ。  わたしは子供の頃から記憶力が優れていた。本なんかは一目見れば何が書かれていたのか覚えてしまうし、一度聞いた話は基本的に忘れない。霊を見るなんて、わたしにとっては貴重すぎる体験。記憶に残らないはずはないのだ。 「あの女の人、わたしの歳を聞いて、娘と同じぐらいだねって微笑んだの。それから、大きくなったらまた会いに来る約束をしたの。天音にも見えてたんでしょ?」 「あんた、怖がってたのに、必死に我慢してたよね」 「うん。話を聞いてあげなきゃいけないって思ったから」  わたしには声までは聞こえなかったが、あの女の人の悲しげな表情は覚えている。語り終えた後、彼女の姿が消えて、あたりの空気が変わった。それと同時に、強烈な眠気が襲ってきて、わたしは自宅で目を覚ましたのだ。 「天音が忘れるはずないのに、変だとは思ってたんだよ。怖い体験だから本能的に記憶から消しちゃったのかなって思ってた」  人間が忘れるのは、自己防衛の意味もあるという。嫌な体験をずっと記憶していると、心に負担がかかるからだ。確かに幼いわたしには怖い体験ではあった。でも、消したい程ではない。  記憶を辿っていくと、他にも似たようなことが何回も起こっていることに気がついた。
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