シマノチ

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 それにしても、さっきからおじいちゃんが必死に何かを訴えているのだが、難易度が高すぎる。  左腕を上に伸ばして、下ろした右腕の肘を曲げて、指先を上に向けているが。 「何かの文字? 〝J〟に見えなくもないけど」  わたしが答えると、おじいちゃんはフルフルと首を横に振って、同じポーズのまま回れ右した。 「ああ、ひらがなの〝し〟だね?」  おじいちゃんは嬉しそうにうなずいている。どうやら文字を伝えようとしているらしい。まさか、幽霊とジェスチャーゲームをやることになるとは。人生何が起こるかわからない。  続いて、次の文字を表そうと両腕を絡ませていたおじいちゃんだったが、途中で口をパクパク動かし始めた。 「おじいちゃん、ジェスチャーは諦めたね」  次の伝えたい文字が若干難しかった模様だ。何度も大きく口を開けている。 「あ行の文字?」  おじいちゃんがうなずく。 「じゃあ、順番に声に出すから、その文字になったら手を上げてね。あ、か、さ、た、な、は……」  そこで、おじいちゃんはとびきり元気に手を上げた。 「〝は〟だね?」  おじいちゃんは慌てて首を横に振る。 「あれ、行き過ぎた? 〝な〟だった?」  おじいちゃんはやっぱり同じように首を振っている。 「もしかして、〝ま〟? フライングだよ、おじいちゃん」 「何やってんの、あんたたち」  傍らで見ていた理絵が突っ込んでくる。おじいちゃんと孫のジェスチャーゲームはもうしばらく続いた。
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