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さわさわと木々が揺れる音が心地よい。イセカイとは、かくも爽やかな風が吹いているのか。わたしは目を開けるのがなんとなく勿体なく感じて、しばらく自然の音に耳を傾けていた。
その時、微かな振動音が鳴っていることに気づき、ポーチからスマホを取り出した。理絵からの新着メッセージだ。
後ろの正面だぁれ
振り返ると、呆れた顔をした理絵が立っていた。
「どっ、どちら様ですか」
「あなたの古くからの友人ですよ。……寒いから、駅前のカフェでなんか飲もうよ」
「はて、そんな俗な場所は知りませんね。わたしはイセカイに……」
「いいから来い。イセカイマニア」
わたしは理絵に引きずられるようにして、現実世界に連れ戻されてしまった。
それでも、わたしは諦めない。いつかイセカイにたどり着く、その日まで。
「血迷ってないで真っ直ぐ歩け」
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