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ウェアのポケットからスマホを取り出してみるが、圏外だ。窓の外は相変わらず吹雪いていて、ちょっと理絵が心配になってくる。
理絵とは小学校からずっと同じ学校、同じクラスという、ある種奇跡的な関係だ。それこそ、家族より一緒にいるかも知れない。理絵のような存在を親友と呼ぶのだろう。
わたしがいなくなった事で、心配しているだろう。むしろ、理絵の方が遭難している可能性だってある。
途端に不安が大きくなってくる。万が一、吹雪の中でさまよって行き倒れていたら。
居ても立っても居られなくなって、外に出ようとしたその時、わたしは後ろから腕を掴まれた。
銀色異世界人が素早くわたしの前に回り込んで、行く手を遮った。
「ちょっと、どいてよ。友達が遭難してるかも知れないの」
彼は仁王立ちしたまま、首を横に振る。
「理絵は大事な親友なの! わたしが助けないと」
つい、声を荒らげてしまった。彼はわたしをなだめるように、肩に手を置いた。
「ドンウォーリー、ステイヒア」
柔らかく、優しそうな声で彼は言った。
「ワタシニマカセテ」
それは確かに日本語だった。彼はわたしを座らせて毛布を渡すと、そのまま外へ出て行ってしまった。
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