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「大人一枚、お願いします」
わたしは二百円を払ってチケットを買うと、入り口の前に立った。時刻は十九時二十二分。閉園八分前だからか、係のお姉さんが少し迷惑そうにこちらをうかがう。
「大丈夫です。もうここには戻ってきませんから。お姉さんは帰って大丈夫ですよ」
わたしがサムズアップして宣言すると、お姉さんはぎょっとしてわたしを見た。
「おバカ。そんな訳にはいかないでしょうが」
背後から頭を何かではたかれた。いつの間にか、理絵が丸めた園内マップを持って立っている。
「すみません、うちの連れがご迷惑をかけて」
理絵が頭を下げつつ、わたしの手を引っ張ってくる。
「待ってよ、チケット買ってるんだから」
「もう閉園なの。あきらめな」
「二百円、あきらめきれるか」
二人で力比べをしていると、お姉さんが笑い出した。
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