14人が本棚に入れています
本棚に追加
「いいですよ、あと少しなら。外の片付けとかありますので」
「やった。お姉さん、ありがとう」
「ちょっと、天音っ」
理絵の声を無視しつつ、わたしは進軍を開始した。入口から少し進んだところで腕時計を確認する。もうすぐ、時間だ。
十九時二十五分。今こそ異界への扉が開くとき。わたしは突撃した。目の前の鏡の中を目指して。
「天音、スゴイ音したけど」
おでこをさすりながら外に出ると、理絵が呆れた顔で待ち構えていた。
「おかしいな、こんなはずでは」
「何がしたいの、あんた」
「約束の時に鏡の館に侵入すれば、イセカイに入り込めるはずなんだよ」
「約束の……なに?」
「よくぞ聞いてくれたね、理絵君。つまり、十九時二十五分。十九二五だよ」
「駄洒落かよ。駄も極まってるわ」
十九時半を過ぎたので、周囲の施設の明かりが一斉に消えていく。これはこれで、不思議な風景だ。ここにはまだ可能性を感じる。
「ほら、帰るよ」
「また明日来ましょう。リベンジで」
「打ちどころ悪かったかな。明日は月曜日だよ」
急に現実に引き戻されて、一気にテンションが急降下してしまった。
最初のコメントを投稿しよう!