ミラーハウスはイセカイへの入口

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「いいですよ、あと少しなら。外の片付けとかありますので」 「やった。お姉さん、ありがとう」 「ちょっと、天音(あまね)っ」  理絵の声を無視しつつ、わたしは進軍を開始した。入口から少し進んだところで腕時計を確認する。もうすぐ、時間だ。  十九時二十五分。今こそ異界への扉が開くとき。わたしは突撃した。目の前の鏡の中を目指して。 「天音(あまね)、スゴイ音したけど」  おでこをさすりながら外に出ると、理絵が呆れた顔で待ち構えていた。 「おかしいな、こんなはずでは」 「何がしたいの、あんた」 「約束の時に鏡の館に侵入すれば、イセカイに入り込めるはずなんだよ」 「約束の……なに?」 「よくぞ聞いてくれたね、理絵君。つまり、十九時二十五分。十九二五(とおくにゴー)だよ」 「駄洒落かよ。駄も極まってるわ」  十九時半を過ぎたので、周囲の施設の明かりが一斉に消えていく。これはこれで、不思議な風景だ。ここにはまだ可能性を感じる。 「ほら、帰るよ」 「また明日来ましょう。リベンジで」 「打ちどころ悪かったかな。明日は月曜日だよ」  急に現実に引き戻されて、一気にテンションが急降下してしまった。
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