十三.

1/1
前へ
/15ページ
次へ

十三.

「『私の子宮』? 笑わせるなよ。 これだけの技術があり無から生きた人間を作り出すことはできても、まともな人間性までは作り出せなかったようだな。 お前などしょせんは形だけを(つくろ)(じつ)(ともな)わない、誰かが設定した範疇(はんちゅう)でしか思考も行動もできない、陳腐(ちんぷ)で幼稚なまがいものだ!」 女を真っ直ぐに(にら)み付け吐き捨てる(りん)に、 「ふふん、何が人間性よ。 そんな曖昧で非論理的な幻想に何の意味があるのかしら……と、あぁ、サプリがやっと出来上がったみたい。 まったく、あんたたちがここを閉鎖なんかしちゃうから、物資の入手にも手間がかかっちゃって一苦労よ」 女は(きびす)を返しふらつきながらラボの奥へと歩み始める。 「待て! お前の心臓! それはどこから手に入れた……」 「言い忘れた! それは妹ちゃんの心臓で間違いない! さっき復元した中央のデータで確認した!」 背後から(さとる)の叫びが響く。 「心臓? あぁ、これは素晴らしいわ。 もしかしてあなたの妹さんの物? 奇遇(きぐう)ね。 じゃあ、ちょっと(いた)んだ私の体、サプリだけじゃ戻りそうに無いから、あなたの身体部位も使わせてもらおうかしら。 この心臓とも一つになって姉妹仲良くしたらいいじゃない」 「ふざけるな! 返せ! (まい)の心臓を返せ!」 「うるわいわね、やっぱりいったん黙らせようかしら」 と、女の言葉が終わるやいなや、再び手術台から呼吸マスクが伸びて(りん)の顔へと迫ってきた。 「くそ、待て! (まい)! そこはお前の居場所じゃない! お前の心臓はそんな出来損ないの人形のためのものじゃない! (まい)!!」 ついに口元を(おお)ったマスク越しに、(りん)のくぐもった絶叫がラボに響き渡った。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加