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十三.
「『私の子宮』?
笑わせるなよ。
これだけの技術があり無から生きた人間を作り出すことはできても、まともな人間性までは作り出せなかったようだな。
お前などしょせんは形だけを繕い実を伴わない、誰かが設定した範疇でしか思考も行動もできない、陳腐で幼稚なまがいものだ!」
女を真っ直ぐに睨み付け吐き捨てる凛に、
「ふふん、何が人間性よ。
そんな曖昧で非論理的な幻想に何の意味があるのかしら……と、あぁ、サプリがやっと出来上がったみたい。
まったく、あんたたちがここを閉鎖なんかしちゃうから、物資の入手にも手間がかかっちゃって一苦労よ」
女は踵を返しふらつきながらラボの奥へと歩み始める。
「待て! お前の心臓!
それはどこから手に入れた……」
「言い忘れた!
それは妹ちゃんの心臓で間違いない!
さっき復元した中央のデータで確認した!」
背後から悟の叫びが響く。
「心臓?
あぁ、これは素晴らしいわ。
もしかしてあなたの妹さんの物?
奇遇ね。
じゃあ、ちょっと傷んだ私の体、サプリだけじゃ戻りそうに無いから、あなたの身体部位も使わせてもらおうかしら。
この心臓とも一つになって姉妹仲良くしたらいいじゃない」
「ふざけるな! 返せ!
舞の心臓を返せ!」
「うるわいわね、やっぱりいったん黙らせようかしら」
と、女の言葉が終わるやいなや、再び手術台から呼吸マスクが伸びて凛の顔へと迫ってきた。
「くそ、待て!
舞! そこはお前の居場所じゃない!
お前の心臓はそんな出来損ないの人形のためのものじゃない!
舞!!」
ついに口元を覆ったマスク越しに、凛のくぐもった絶叫がラボに響き渡った。
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