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二.
現着は凛と悟が最初だった。
救急車のサイレンがまだ遠くに聞こえる。
駆け込んだ公園の噴水広場手前、ベンチ裏の茂みで、
「しっかりしろ!」
「あきらめるな!」
二人の老ホームレスがかがみ込み震える声を上げていた。
彼らをそっと退けると、ランニング中であったと思しき服装の女性が、血溜まりの中、息も絶え絶えに体を丸めて横たわっていた。
「大丈夫ですか?
お名前は?
犯人を見ましたか?」
重ねて問う凛の声に、女性は僅かに首を横に振り、
「長い……黒い髪の……女が……」
とだけ呻くように呟くと、喉からしゃくり上げるような音を数度鳴らして痙攣し、ふいに体の力が抜けた。
拳を握りしめた凛が大きなため息で彼女を包み込むと、答えるように彼女の遺体は体を仰向けに開き、その無惨な傷口を露呈してみせた。
「また、子宮を……盗まれてる」
「また、『まるでクラフラ』だな」
立ち上がって辺りを窺う悟の言葉に、凛の背が一瞬、強張った。
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