七.

1/1
前へ
/15ページ
次へ

七.

「!!」 目を覚ました(りん)は、手術台に固く拘束(こうそく)されていた。 横たわる体の上を幾つかのマシンが(なめ)らかに行き交い、恐らくは身体の内外をスキャンされている。 と、 「綺麗で素敵な体ね」 頭上から女の声が響き、さらさらと長い黒髪が(りん)の顔にかかる。 「お前は……!?」 「無駄なく(きた)えられてるし、アルコールやニコチンの汚染も無い。 子宮も未使用でとっても健康よ」 長い黒髪、子宮……! (りん)の顔を間近(まぢか)(のぞ)き込んできた女に、公園で子宮を奪われ亡くなった女性を思い出し、確信する。 こいつが犯人だ。 だが一体、 「何者だ、お前は」 黒髪の隙間(すきま)から(うかが)える女の顔を(にら)み、目が合い、そしてこんな状況だと言うのに、一瞬見とれた。 この世にこんなに美しい人間がいるだろうか。 「私が誰なのかなんて。 どうせあなたは私に子宮を(きょう)したらすぐに廃棄されるのだし」 微笑むと女は顔を上げて手術台から離れた。 そして入れ替わるように呼吸マスクが現れ(りん)の口を(ふさ)ぎ、さらにメスや鉗子(かんし)を備えたアームが手術台を取り囲む。 「な!? やめろ! 離せ! (ほど)け!」 叫ぶも、(りん)はマスクに送られ始めたガスを吸い込まぬよう、慌てて息を止めた。 返事は無い。 何なんだ、あいつは! くそ! もう息が……! 限界を(むか)え、思わず口を開き一気にガスを吸い込みかけた、その時。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加