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七.
「!!」
目を覚ました凛は、手術台に固く拘束されていた。
横たわる体の上を幾つかのマシンが滑らかに行き交い、恐らくは身体の内外をスキャンされている。
と、
「綺麗で素敵な体ね」
頭上から女の声が響き、さらさらと長い黒髪が凛の顔にかかる。
「お前は……!?」
「無駄なく鍛えられてるし、アルコールやニコチンの汚染も無い。
子宮も未使用でとっても健康よ」
長い黒髪、子宮……!
凛の顔を間近に覗き込んできた女に、公園で子宮を奪われ亡くなった女性を思い出し、確信する。
こいつが犯人だ。
だが一体、
「何者だ、お前は」
黒髪の隙間から窺える女の顔を睨み、目が合い、そしてこんな状況だと言うのに、一瞬見とれた。
この世にこんなに美しい人間がいるだろうか。
「私が誰なのかなんて。
どうせあなたは私に子宮を供したらすぐに廃棄されるのだし」
微笑むと女は顔を上げて手術台から離れた。
そして入れ替わるように呼吸マスクが現れ凛の口を塞ぎ、さらにメスや鉗子を備えたアームが手術台を取り囲む。
「な!? やめろ! 離せ! 解け!」
叫ぶも、凛はマスクに送られ始めたガスを吸い込まぬよう、慌てて息を止めた。
返事は無い。
何なんだ、あいつは! くそ! もう息が……!
限界を迎え、思わず口を開き一気にガスを吸い込みかけた、その時。
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