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「さて、色々あるね。どこを見ようか」
「なるべく形が崩れないものがいいな……可愛らしい感じでもいいけどお茶とかは持ってっても飲めないからその場で食べられるもの……」
やはり有力候補はクッキーなど日持ちのする焼き菓子だろうか。
ギフト用に包装されたものや缶入りのものなど色々なタイプがあるから、選ぶのには困らなさそうだが、それ故に優柔不断な尚斗には、決めかねてしまうという不安要素も生まれてくる。
もう少し選択肢の幅が狭いものの方がいいか。
「んー……あ、……」
ぐるりと周囲を見渡したその時──。
それは突然、尚斗の目の前に現れた。
まるで、見つけてもらうのを持っていたかのように、ほわほわとした光をまとって輝く。
ショーケースの中に並べられた、幾多もある商品。
華やかな作りのもの、見た目が艶やかなもの、可愛らしいものなど、たくさんの商品が並んでいる。しかしそれは、その中でもとりわけ特徴のない、言ってみれば〝地味〟な品物だった。
けれど不思議なことに、尚斗にはそれだけが〝特別なモノ〟であるように見えた。
形としてもオーソドックス、華美な装飾もないシンプルな作り。流行りの〝映え〟なんて言葉からは最も遠そうな──。
「そちらはクリスマスの限定商品なんですよ。来年の干支とコラボしているもので……」
あまりにまじまじと見つめているもので〝脈アリ〟と思われたのか、ショーケース越しに柔和な雰囲気の女性店員が話しかけてきた。
この売場の担当になって長いのか、販売歴がそれなりにありそうな年増の女性は、尚斗の様子を伺いながら商品の特徴を説明し始めた。
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