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「通常ですと当日中にお召し上がりいただくのですが、冷凍のものもご用意がありますので、もしお召し上がりまでお時間あるようでしたらそちらをお勧めしております。お召し上がりになる前に冷凍庫から出していただいて、二、三時間自然解凍してからお召し上がりください」
そう言うと、女性店員は再びニコリと微笑んで尚斗を見た。
今日帰ってから一旦冷凍庫に入れておき、翌朝出して自然解凍すれば、昼休みくらいには食べ頃になっているはずだ。
「いいのあったかい?」
泰正が背後から声をかけてくる。尚斗は振り返りざま、
「おはぎとか変じゃないかな? 地味すぎる?」
と問いかけた。
泰正がショーケースに並んだ限定品のおはぎを覗き込む。
「綺麗な色のおはぎだね。大きすぎないしお昼ご飯のあとに食べるならちょうどいいんじゃないかい?」
泰正の目尻に笑い皺が刻まれる。
柔らかく優しい眼差しを向けてくる泰正に、
「うん、すごく綺麗だから月冴に……ケーキの代わりになるかな?」
そう再び問いかけると、
「大丈夫だよ。なおが一生懸命選んだんだから。月冴君もきっと気に入ってくれるさ」
そう言って笑った。
泰正のその一言で、尚斗の中にある躊躇していた気持ちがしっかりと固まった。意を決して女性店員に声をかける。
「あのっ……これお願いします。贈り物にするので、冷凍の方で……」
「ありがとうございます。ただいまご用意いたしますね」
三度目になる笑みを湛えて、女性店員は品物の用意を始めたのだった。
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