プレゼントをさがしに

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「おはぎだもんな……さすがにコーヒーってわけにもいかないだろ」  泰正が好んで買ってくる緑茶が入った茶筒と、年季の入った急須を取り出した。ポットに水を汲み、お湯を沸かす。 (委員長が前に緑茶を淹れる時の温度は70度前後が良いって言ってたけど、時間経って飲むのに微温(ぬる)くなりそうだよな……でも美味しい方が良いのか)  いつもコーヒーを淹れて持っていくサーモボトルを食器棚から出してきて、ポットの湯が70度で保温に切り替わったのを確認すると、急須の茶こしにお茶っ葉を入れてから湯を注いだ。お茶のいい香りが尚斗の鼻先をくすぐる。  急須に蓋をして蒸らしてから、今度は中身をサーモボトルに注ぐ。 「紙コップ……」  どこかにあったはず、と戸棚の下の扉を開けると、紙皿やら紙ナプキン、割り箸なんかと一緒にまとめて紙コップも置かれていた。  そこから一つ取り、ビニール袋に包んで蓋をしたサーモボトルに逆さにして被せる。スクールバッグにボトルを入れファスナーを閉める。    これで準備万端だ。    スマホの画面を点け、時間を確認すると早目に用意出来たからか、出かけるまで十分時間があった。今度は尚斗自身が少しリラックスするためにコーヒーを淹れる。  たっぷり時間をかけてコーヒーを楽しんだのち、もう一度スマホの画面を確認すると出かける頃合いになっていた。 「そろそろ行くか」  ブレザーを着て荷物を持ち、玄関に向かうと通学用のローファーを履く。  玄関を出て鍵を閉め、門を出たところでヒュゥ、と、からっ風が剥き出しの頬を撫でた。 「……やっぱ冬は寒いな」  独り言ち、両手をスラックスのポケットに突っ込むと、学校までの道程を背を丸めて歩き出した。
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