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本格的な冬の訪れ──風の冷たさに身震いすると、月冴が持っていたブランケットを肩にかけてくれる。
「大丈夫? 尚斗冷え性だもんね」
月冴が抱きしめていたブランケットは彼の体温がほんのり移っていて温かい。それにいい匂いがする。
思わず鼻先をふっくらとした布地に埋めると、
「尚斗だけずるー! オレもちょっと入れて!」
言うなり隣にいた亮平がにじり寄ってきた。
「おいやめろ狭いだろ」
そう言っても亮平は遠慮なしに脇からグイグイ詰め寄ってくる。
月冴が持ってきたブランケットは、もともとひとりで使うひざ掛けサイズのものだ。ふたりで入れば当然狭いしブランケットとしての意味を成さない。
結局、亮平に半分ブランケットを奪われ、たいして風除けの効果を得られないまま、尚斗は悴んだ手で持ってきた菖蒲色の包みを開けた。
今朝出してきたばかりの小さめの重箱……蓋を開けると中から顔を覗かせたのはピンクと薄い緑色の一口サイズのおはぎだ。
横から覗き込んだ月冴が目を丸く見開く。
「クリスマス限定らしくて。デザートにいいかなって。ケーキの代わり」
「今日、誕生日だから」──そう付け加えると、
「可愛い~! クリスマスカラーだ」
ふくふくとした白い頬を染め、月冴がへにゃりと笑う。
それを見た尚斗の目尻が柔らかく下がった。
「さくら味と抹茶味なんだって。あと限定だからこれもついてた」
続いて絵馬に紅白の雪うさぎが描かれたキーホルダーサイズの根付を、ブレザーのポケットから出して手渡し、
「ほら、月冴卯年だし。来年の干支」
そう言うと、先程とは違う表情──今度は驚きに満ちた顔で月冴は尚斗を見た。
その様子に、尚斗は内心ちょっとだけ焦る。
(あれ……なんでこんな驚いた顔して……もしかしてもう持ってたとか?)
もし根付をもう持っていたのなら逆にガラクタを増やしてしまった──尚斗がそう思った時だった。
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