プレゼントをさがしに

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 色々な和柄のちりめんを組み合わせたパッチワークで作られたファスナー蓋付きの箱──それは亡き祖母の葵が尚斗のために作ってくれた宝物入れだった。  小さい頃は、キャラメルのおまけについてきた食玩や、どこかに行った時に店の人がくれたシールや、ゲームセンターのメダルなんかを入れていた気がするが、いつの間にか、お年玉や小遣いを入れる貯金箱になっていた。  ファスナーを開けると、何枚かのポチ袋と一緒に拙い字で〝おこずかい〟と書かれたミニ封筒が顔をのぞかせる。 (何年前の字だよ……お小遣いが平仮名だし、小学生くらいか?)  自分の性格上、手のかかることは極力避ける主義だから、学年が上がるとか年齢がいくとかそういうタイミングで几帳面に書き換えるなんてことはしないはずだ。ここまでくると物臭甚だしい。改めて見ると気にはなるが、それでもやっぱり書き換えることはしない。 「えっと……あ、良かった。まだ残ってる」  ミニ封筒を開いて中から一万円札を取り出す。  夏休みは極力市内の図書館や学校の図書室で書籍を借りて済ますようにして、購入を最低限に留めたのが功を奏したらしい。これだけあれば、難なく誕生日プレゼントを用意できそうだ。  封筒を中に戻してファスナーを閉め、元あった場所に箱を戻して引き出しを閉める。床に置いていた財布を再び広げ、札入れから入れっぱなしのレシートを取り出し、代わりに一万円札を仕舞い込んだ。手にしたレシートはまとめて部屋のゴミ箱に捨てる。  ボディバッグに財布と家の鍵とハンカチテッシュを入れ、帰宅時の防寒用に手袋も畳んで入れた。マフラーは……バッグがパンパンになるから置いていこう。その代わりに読みさしの小説を入れる。  都心部まで出るのに適当な格好は良くないかと、着ていたスウェットの上を脱ぎ、タンスから黒のタートルネックを引っ張り出して着替える。その上に淡いブルーのネルシャツを合わせ、上2つ分あけてそこから下のボタンを全て留めた。
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