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下は……黒のスキニーだからこれでいい。靴下もちゃんと履いているし。
薄くても温かいとひっきりなしにテレビでCMしているKITEQYOのスリムダウンを羽織って、尚斗はバッグを持って自室を出ると、母屋に向かった。
玄関に行くと、ちょっといい格好をした泰正が靴を履いているところに出くわした。出勤の時のように靴べらを使い革靴を履いた泰正が振り返るなり立っていた尚斗を見て「おや」と目を丸くした。
「じいちゃん、出かけるの?」
「そろそろお年賀をお願いしておこうと思ってね。お歳暮と一緒にお願いしてくれば良かったんだけど、お店が混んでいたから」
「そうなんだ?」
足に馴染んだスニーカーを引っ掛け玄関におりると、
「なおも出かけるのかい?」
そう泰正に尋ねられた。
「うん、月冴の誕生日プレゼント見に行こうと思って。ネットで見てたんだけどイマイチこう……」
「あぁ、分かり難いよねぇ。サイズとか色とか。照明の加減で違って見えることもあるみたいだし」
身振り手振りを交えて伝えると、泰正がしみじみ頷く。
泰正がネットでも注文できるお中元やお歳暮やお年賀を、わざわざデパートに足を運んでまで見る所以はここにある。
もう一つの理由としては、パソコンの操作が苦手だから、があるのだが。
「そうだ。お昼もまだだし一緒に行かないかい? どこかで食べてからデパートを見よう」
「たまには良いかも。じいちゃんと昼一緒に食べられる機会滅多にないから。そういえば、週末の休みって久々じゃない?」
「そういえばそうでした」
帽子掛から帽子を取って被りながら、泰正がおどけたように言った。
玄関を施錠してふたりで駅に向かう。都心部の新星駅までは、最寄りの駅から急行で20分ほどだ。電車に乗ってからダウンのポケットに忍ばせていたスマホで時間を確認すると、時刻はまもなく11時になろうかというところだった。
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