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そんな肌に人一倍気を使う彼だからこそ、ハンドクリームのように肌に直接触れないと使えないものは、慎重に選ぶ必要がある。
(俺みたいなズボラが成分表示見たところで何が良いとかわかんねぇし、やっぱり物にしよう)
無機物なら消費期限の心配もないし、月冴のように発想豊かなタイプなら有効に使ってくれるだろう。
雑貨コーナーを離れ、今度は文房具コーナーへと向かう。
ノートやシール、ポストカードや付箋など、ありとあらゆる文房具がずらりと並んでいる。画材やコミックアート用のカラーペンなんかも並んでいて、尚斗は思わず目を丸くした。こんなの、画材専門店にしかないと思っていたのに。
(最近はなんでも置いてるんだな……ん?)
ふと、柔らかいタッチで描かれた花模様のプリントされた便箋が目に入る。ここは便箋だけを集めたコーナーのようだ。
(そういえば、両家のじーちゃんばーちゃんによく手紙を書いて送ってるって言ってたっけ)
月冴の母親はスウェーデン出身で、その両親は現地の田舎でのんびり暮らしているらしい。父親の方は国内だが、父親自身の仕事が忙しい為に頻繁に会いに行ったりはしていないようで、代わりにマメに手紙を書いて送っていると聞いたことがある。
(たくさん手紙を書くなら便箋なんていくらあっても困らないよな?)
妙案とばかりに目の前の棚を注視する。
花柄は可愛らしいが女性的すぎるし、和柄は日本古来のものだからウケるだろうがどうにも彼らしくない。もっと月冴らしい柄は──。
「あ、……これがいいな」
尚斗が手に取ったのはバスケットボールやゴールなど、バスケットに関するイラストがプリントされた便箋セットだった。
生成り色の紙に薄茶色の罫線、ボールがゴールに向かって飛んでいく様を描いたイラストが上下に印刷されている。封筒にもドリブルをする少年のシルエットが淡い色使いで描かれているのが印象的だ。同封されている封印用のシールは、バスケットボールそのものである。
「月冴バスケやってるし、アイツっぽい」
手にしたまま他の柄の便箋も見てみる。
すると今度は何列か横にずれた棚で、白地に濃紺の縁取り、月の満ち欠けがプリントされた便箋を見つけた。月冴は名前に〝月〟が入っているし、これも彼を象徴しているようでグッと惹かれた。一冊手に取ると先程手にした便箋セットへと重ね合わせる。
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