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エレベーターに乗り込み、次に泰正と向かった先は地下食品売り場。
ここでお年賀用の一品を探すのが二つ目の目的だ。
「今年のお正月はなんだったっけ?」
「署長はお酒を飲むから肴になるようなものにしたんだよ。鮪の角煮だったかな」
メモを控えてきたのか泰正がスマホの画面をタップしてメモ画面を確認する。そこには当時購入した店の名前と商品名が記載されていた。
「さすがに来年も同じって訳にはいかないからね」
「たしかに。今年魚だったなら来年は肉? ハムとか」
「日持ちしないとしょうがないからね。そうだなぁ、向かいにデリカテッセンがあったから、今回はそっちを見てみようか」
フロアマップで店の位置を確認してから向かう。
日曜日ということもあり食品売り場は人も多く、各所で人だかりが出来ていた。半ば人波に酔いかけた頃、目的としていた店の前に辿り着いた。
泰正が言っていた条件でお年賀に良さそうな商品を探す。
お年賀と言っても、持っていく場所も多くない為一つ物が決まってしまえばあとはすんなりとことが運んだ。必要数を買い、早々に店を後にする。
「あ、じいちゃん。スイーツコーナー見てっても良い?」
「もちろんかまわないよ。そうか、月冴君にケーキでも?」
「そう思ったんだけど、学校に持ってくには難易度高いからさ、もう少しハードル低いやつにしようかなって」
誕生日を祝う菓子に難易度もなにもないのだが、仮にケーキを選んだとして無事に学校まで持って行ける自信がないのだ。開けてぐちゃぐちゃに崩れたケーキなんて、想像もしたくない。近くの柱に貼られたフロアマップを凝視する。
同じ食品フロアでもエリア分けされているらしく、スイーツコーナーは尚斗たちがいる場所からもう少し奥に行かねばならなかった。
人混みを避け、なるべく閑散としている通路を選びスイーツコーナーを目指す。やがてフロアタイルがパステルカラーを基調としたものに変わり、女性客の姿が目立つようになってきた。
視線だけで天井を見上げると、【スイーツコーナー】と釣り看板が下がっているのが目に入った。
もうこの一帯から尚斗が目指していたスイーツコーナーらしい。
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