プロローグ

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 土本(つちもと)愛理、二十四才。株式会社voll(フォル)に勤めていて、パッケージソフトの導入支援や社内システム構築を担当している。  身長百五十八センチで百六十は欲しかった私は、学生の頃牛乳を飲んで努力をしたがそれ以上は伸びなかった。そんな話を紘人にしたら『たいして変わらないだろ』って笑われた。  目尻が上向きで黒目が大きいから猫っぽいとか気が強そうとよく言われ、そこはメイクでうまく調和をとる。見た目とは反対に、質素倹約をモットーに読書とパソコンが好きでその性格から昔はよく地味や根暗だと揶揄された。大学生を経て社会人になり多少は見た目も気を使うようになったが本質は変わっていない。  だから情けないことに紘人と付き合うまで、ろくな恋愛経験がなかった。  全部彼に教えられていく。こんな頭の芯まで蕩けそうな甘い口づけは彼と付き合うまで知らなかった。  いつの間にか紘人は私に覆いかぶさってキスの主導権を握っていた。こうなると、先ほどまで彼と熱を交わしていた体が内から燻りだす。それを感じたのか唇を重ねながら私の頬や髪に触れていた彼の手は、さりげなく下に移動して私の肌をなぞった。 「やっ」  目を見張って声をあげたのと、名残惜しそうに唇が離れたのはほぼ同時だった。肩を上下させ、真っすぐに紘人を見つめる。すると彼の目がそっと細められた。 「足りなかったか?」  おかしそうに問いかけられ眉をひそめる。シャツを羽織っている彼に対し、私はなにも身に纏っておらず今になってその対比に羞恥心が湧き上がりそうになった。
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