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11.産後すぐの様子
結局吸引分娩になってしまったので息子は念の為小児科へ連れて行かれた。その間私は切れてしまったオマタを縫合してもらう。麻酔追加されて3本くらい打たれて、せっせと縫われていたが……どれくらい縫われているのかとか正直考えたくもない。痛みはないとは言わないが、陣痛に比べたらたいしたことはないのでじっとしていた。
縫合が終わって、若い方の医師はすっかり寡黙な青年に戻っていた。この人にも「ありがとうございます」と言っておいたが「いや、仕事なんで」的テンションでとっとと出て行った。実は私はこういうタイプの人は割と好きだ。あんまり身近にいないんだけどね。
その後は助産師さんたちが赤ちゃんを連れて戻ってきて、カンガルーケアをしてもらう。ひよひよの赤ちゃんを胸の上にのせてもらった。さすが3000g超え、なかなかずっしりしていて重い。しばらくその状態で写真を撮ってもらったり、希望していた胎盤見学をするなどした(つるんと無傷で出て来るものなのか、大きなクラゲを潰したような肉の塊。思っていたより大きく、優に手のひら二つ分はあった。厚みは皮を取り除いた鶏モモ肉くらいはありそう。へその緒がついてる側は青っぽい色で、逆の面は赤黒かった。触るとぶよぶよしていて、においは自分の臓器だからかあんまりにおわないと感じた。レバーみたいと言われるらしいが、全然おいしそうではない。むしろおいしそうなのはへその緒の方で、高級なオーディオケーブル2本分くらいの太さのホルモンみたいで、コリコリしていた。食うなら胎盤よりへその緒だろ、と思った)。
そうこうしていたら、胸の上で赤ちゃんが何かぐずっている。なぜか直観的に「こいつ、おっぱい探してんじゃね?」と思ってしまってナースコールを押す。「なんとなくおっぱい吸いたそうにしてるので、出ないと思うけど吸わせてもいいですか」と訊くと「やってみましょう!」とのことですぐやってくれた。
生まれたばかりの息子は、待ってましたとばかりに乳首に吸い付いて、すぐ外れたんだけどほっといたら自力でもう一回乳首を探り当てて一生懸命吸っていた。かなり食い意地の張ったヤツだなあと思った。それで、妊娠中たいした栄養も取らなかったのに3キロまで肥えたんだろうか? チュパチュパと頑張っていた息子はしばらくすると「出ねえんだけど!」的な何か怒ったような顔というか雰囲気を醸し出してにゃーにゃー泣いていたが、こちとら産後すぐである。「そんなすぐ母乳なんか、出ねーからな」と、とりあえず言っておいた。
しばらく休んだら、息子は諸々の検査があるとかなんかで(たぶん)新生児室へ運ばれて行った。その間、私は晩御飯を食べてもう少々休めとのこと。一晩LDRでもいいのよ、と言われたが……いや、ここ赤ちゃん産む部屋でしょ? 大部屋より休めそうだけど、また昨夜みたいに出産ラッシュになったら困るでしょうに、と言ったら「お気遣いありがとう、じゃあ貧血大丈夫だったら大部屋に戻ってね。でもとりあえずご飯食べて」とのこと。
なんでこんなに親切なのかこの時は理解していなかったが、実は私は出産で大量失血していたのである! とはいえ、輸血が必要だとか意識がないとかそういうレベルではなく。でも気を使われる程度には重症。後になって母子手帳をみたら「出血多量(1060ml)」と記録されていた。
1リットル超えの出血!!
急性ショックとか起きてもおかしくなさそうな数値に、今更ビビるが……いや別に晩飯食えてるし特に問題はなさそう。
ここで医学的な記録を公開しよう。私の出産状態は以下の通り。
妊娠期間 40週1日
分娩日時 11月吉日 午後4時16分
頭位 吸引分娩 所要時間6時間33分
出血多量1060ml 輸血なし
性別 男 単胎 体重3250g 身長53.0cm 胸囲31.0cm 頭囲34.0cm
おいこら待て。妊娠中から警戒してたけど、やっぱり頭大きいじゃねえか!!
こうなりそうだから計画帝王切開にしなくてええんかと私は何度も訊いたのに! いやでも結果的には出たわけだから(私は大変なことになっとりますが)、帝王切開にしなくて正解だった……のか? こればっかりは、やってみてないから分からない。帝王切開は帝王切開で術後が大変だし、保険は効くけど料金も上乗せでかかってくるし、そう単純な問題ではないのだ。緊急入院して陣痛促進剤をざぶざぶ使った上に、頑張っても出なくて急遽帝王切開(しかも縦切り)というルートもあったのだから、それに比べたらラッキーである。あまり深く考えてはいけない。
まあそんなわけで私の出産はこれにて終了した。この後は、これまでを振り返って出産当日の夜、私が何を考えていたかを記してこの記録を終わろうと思う。
何はともあれ、産まれてくれてよかった……! 見たところ目も二つだし、鼻も口もちゃんとあったし、手足も指も多からず少なからず。若干頭が大きい気はするが……! 私ではなく夫からの遺伝に違いないので、文句は息子ではなく夫に言うべきなのかもしれない。
ハッピーバース、我が息子よ。
人生とは山あり谷あり落とし穴ありの厳しいものだが……とりあえず産まれたのだから観念して邁進してくれよ。
まあなんだ、その……お疲れ様。なんかきみ、途中で出て来る方向間違えてたみたいだけど……方向音痴なのかそれとも運動音痴なのだろうか。普通の子より出てくるの大変だった感じだけど、今夜はゆっくりやすんでください(っていうか私を寝かせてください、頼むから)。
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