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第602話 独自を伝えていく
とりあえず、チョコカスタードの包餡の作業は僕とラティストが請け負うことになった。
「……この方法は、異世界独自の調理法だと思う」
リトくんには聞こえにくい音量で、ラティストがポツリと呟いた。
「そうなの?」
「精霊の里でも、パンの中に具材を入れるなどはなかった」
「今更だけど、精霊さんも料理作るんだね?」
「人間の技術を真似た道楽みたいな感じだがな。だが、パンはケントのものが一番美味い」
「ありがとう。誠心誠意込めて作っているからかな?」
「ああ。気持ちはよく伝わってくる。ポーションの効能もだが、俺が初めて食べたパンにそれがよく染み渡っていた」
「へー?」
それで、僕と契約してくれたのかなって聞けば、それも理由のひとつだと教えてくれたんだ。
「ルカリアへの想いとは違うが、俺は『ケント』だから契約したいと思った。それは忘れないで欲しい」
「わかった」
それも嬉しいけど……包餡しながら、会話出来るようになったラティストの成長も嬉しいなあと思っちゃう。
出来上がったら、今度はリトくんとスインが参加しやすい作業に移ることにした。
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