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ベッドの下からは、車輪がレールの上を走るかすかな金属音がする。
一泊二日の贅沢なひとり旅に来ていたはずのわたしは今、なぜかその『あきつ島』の最高級の客室、ロイヤルスイートルームにいた。
しかも、これまで出会ったこともないようなハイスペックな男性と一緒に。
「結菜、きみを俺のものにしたい」
甘い色を浮かべた瞳で見下ろしてくるその人は、東條伊織さん。
鉄道関係の会社を数多く傘下に置く『東條財閥』の若き最高経営責任者。
恐ろしいほど整った顔に高い身長、引きしまった体。もちろん社会的な地位や経済力もある。
そんな最高級の男性と、二十八歳の平凡な会社員であるわたしがどうしてこんなに親密になったかというと、それには深いわけがあった。
時は、十四時間ほど前にさかのぼる――。
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