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さっきまでふたりでお酒を飲んでいたのに、今はもう広いベッドの上。寝室に入るとすぐに押し倒されて、あっという間にセミフォーマルのワンピースを脱がされた。
素肌にふれる彼の手も、わたしの頬と同じくらい熱い。
「……ん」
深く口づけられ覚悟を決めたとき、覆いかぶさっていた男の体の重みがなくなった。
ふと目を開けると、わたしの腰にまたがったまま起き上がった伊織さんが、仕立てのいいジャケットとシャツを脱ぎ捨てていた。しなやかな筋肉のついたたくましい上半身があらわになる。
髪をかき上げる彼の背後には大きな窓があって、深夜のまばらな街の灯がものすごいスピードで流れていった。
時速五、六十キロで遠ざかる夜景――そう、ここはマンションやホテルではない。
日本でも有数のクルーズトレイン、『グラントレノ あきつ島』。
なんとここは百倍もの倍率の抽選をくぐり抜けなければ予約が取れないという、絶大な人気を誇る豪華列車の中なのだ。
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