13人が本棚に入れています
本棚に追加
***
客席で見るファッションショーがこんなにも切ないものだとは思わなかった。
秋生がまだ中学生の頃。初めてこの高校の文化祭に来て、同じように客席で被服部のショーを見た。ランウェイを歩く女子生徒たちはうんと大人びて見え、雑誌で見るコレクションの何倍も輝いて見えた。
眩しかった。
あの頃は憧れで。
今は単に、スポットライトが涙に滲む。
部員たちは皆秋生を憐れんだ。けれど、彼女たちの誰一人として、代打のモデルを名乗り出てくれる者はいなかった。そんなものだ。どうせ、そんなものなのだ。
音楽が流れ始める。みんなで選んだバックミュージック。舞台袖から登場するモデルたち。
きっと、同じように舞台袖では、部員たちが最後の確認をしている。自分のモデルに向かって「頑張って」と声を掛け――それは秋生が花純と交わすはずのやり取りだった。
ダメだった。
もう、見ていられなかった。
せっかくの晴れ舞台、きちんと見届けてあげなくてはと思うのに。涙が溢れて、溢れて、止まらない。
その時だった。秋生の右から、左から、どよめきが起こったのは。
最初のコメントを投稿しよう!