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 わからないものだ。  下敷きでせっせと顔を扇ぎながら、茂樹は二人を眺めて思う。  茂樹が見た限りでは、毎週のように追加されるマニキュアの小瓶は、秋生が自前で買い揃えているようなのだ。値段なんて知らないが、毎週ともなれば結構な額になる。そうまでして他人の女に貢ぐ理由が、茂樹にはさっぱりわからない。 「徹、見て見てぇー」  花純の声がワントーン高くなったことで、茂樹も我に返った。目の前に影が落ちたと思ったら。茂樹なんて見えていないかのように、制服の尻が無理矢理机に乗ってきた。 「へぇ。悪くないんじゃん?」  茂樹は迷惑そうにTシャツの透ける背中を見上げたけれど。気付かれる前に目を逸らした。  徹は花純の手首を取ってじっくりと塗ったばかりのネイルを鑑賞し、それから秋生へ視線を向けた。 「これも秋生がやったの?」  秋生はキュッと肩を縮め、目を見開いて徹を見上げる。 「あっ。うん」 「ホント器用だよな、お前」  言うだけ言って、秋生のお礼の言葉も聞かずに、徹は自分の席に戻っていった。  残されたのはネイルを乾かすよう命じる花純と、従順にハンディ扇風機を取り出す秋生。照れ屋なのか、怖かったのか、秋生はしばらく見開いた目を泳がせていた。
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