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***  夏休みが始まった。  やる気のない体操部員である茂樹は、週に三日も学校にくればいい方だ。朝涼しいうちに体育館へやってきて、軽い練習を少しして。あとは部室の扇風機を取り合いながら駄弁るだけ。これはこれで立派な青春の夏である。  ある日、被服部の一団が体育館を少しの間貸してほしいと言ってきた。部長は二つ返事で承諾し、部員たちはこれ幸いと換気用の大扇風機の前に陣取った。  何気なく舞台の上を眺めていた茂樹は、その中に見知ったひよこ頭を発見する。  秋生だ。  男子部員は彼一人だが、積極的に話し合いに参加しているように見えた。 「去年の通りだと、ランウェイはここまでのはず――」 「誰か試しに歩いてみて――」 「一人当たりの持ち時間は――」  などと漏れ聞こえてきた。  そういえば、被服部は毎年文化祭でファッションショーをするのだったか。  さっぱり興味はなかったけれど、いつもへらへら媚びを売っている秋生の真剣な表情は、なぜだか茂樹の目に焼き付いた。
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