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 そんなことがあって、夏休み明け。  高校全体が文化祭の準備に忙しくなる。茂樹も嫌々ながらクラスの買い出しや飾り付けを手伝っていた。  新学期に入ってからも、秋生ネイルサロンは営業を続けていた。  二人の仲は相変わらずのようだった。時折そこに徹も混じる。その様は、傍目に見れば仲良しトリオと言えなくもなかったが、実情は少し異なっていたのだと、茂樹は図らずも知ることとなった。  カフェの会場となる調理室は、被服室の隣にある。その日、おそくまで装飾のために残っていた茂樹は、被服室で言い争う人の声を耳にした。  覗くつもりなんてなかった。ただ、ちょうど帰ろうと廊下に出た時に、被服室から澤村花純が飛び出してきたのである。  花純は茂樹を見るなり「何?」と鋭く一言。こちらが言葉を返す暇もなく、彼女は速足で立ち去ってしまった。その顔は引き攣って歪み、怒りで紅潮しているように見えた。  いったい何事だろう。  茂樹は邪な好奇心で、開けっ放しにされた被服室の中を覗き込んだ。  並べられたトルソー。壁にも何着か掛けられている。それはいったい誰がいつ着るんだと言いたくなるような、被服部員たちの努力の結晶たちであった。 その前で揺れるひよこ頭。ペタリと床に座り込んでいるのは、川端秋生だ。  言い争いをしていたのは花純と秋生だったのだと瞬時に悟る。  立ち去るべきだ。そうわかっていたのに、躊躇う間に秋生がこちらを振り向いてしまった。
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